株式会社阪急交通社は、1948年創業の旅行代理店の老舗であり、国内、海外の旅行先を幅広くカバーしている。2000年代に入り、既存の新聞・情報誌・ダイレクトメールに加え、インターネット販売にも積極的に注力している。
今日の旅行業界ではWebサイトから様々なツアーが選べ、複数のプランを比較し、オンラインで手軽に予約できることが当たり前になっている。そのため大手から中小まで多くの旅行代理店が、ツアー内容や広告戦略に工夫を凝らしている。阪急交通社にとっても、より多くのユーザーの目に留まるかどうかを左右するSEO(検索エンジン最適化)対策が大きな課題の一つだった。
インタビューに答えていただいたのは、株式会社阪急交通社 営業統括本部ウェブ推進部ウェブ推進課一係 西浦 俊太朗 氏。西浦氏は阪急交通社の旅行サイトの運用を担っている。サイトの表示速度が検索順位に影響する、という情報を前もって得ていたところ、テリロジーの提供するユーザー体感品質測定サービス『CloudTriage QoEサービス』に興味を持ち、実際に導入頂いた。
実は当初、西浦氏個人としてはサイトの表示速度に不満を感じてはいなかった。しかし、全く問題が無いと言い切れない理由があった。「遅延が全くないわけではないと思う。ユーザーから寄せられる"サイトに繋がらない"などの声は、数えるほどではあっても自分の耳にも入ってきていた」「こちらが把握できていないだけで、サイトが遅い、繋がりにくいと感じたユーザーは、何も言わずに他のサイトへ移っていた可能性もある」
阪急交通社ではこれまで継続的にWebサイトの改善を重ねてきたが、西浦氏は「正直に言って、サイトの表示速度について正面から取り組んだことはなかった」という。「これまでのサイト表示速度に関係する取り組みといえば、主にサイトのリッチ化に際して表示速度が落ちないように、画像サイズの適正化などを行っていた」「ツールを用いた表示速度の測定や結果の共有までは行っていなかった」
「Webチームにおいてリーダーに当たるメンバーならば自主的に表示速度の測定も行っていたかもしれないが、測定結果をチームの全員で情報共有していたわけではなかった。優先度としては後回しになっていたと思う」
西浦氏はCloudTriageに最初に興味を持った理由を次のように述べた。
「サイト表示速度の改善には関心があったものの、社内の規定でオンラインサービスやフリーソフトの利用には制限があった。正式にサービスとしてサイト表示速度測定を紹介・提供してくれた企業はテリロジーが初めてで、詳しく話を聞くことができた」
また、CloudTriageの導入について「お願いすることを決めたのは、他社と比較できる点がいいと思ったから」と述べている。
阪急交通社は自社のサイトのほか、競合2社のサイトを対象に、3サイト同時に測定した。
結果は、阪急交通社のサイト表示速度は決して悪いものではなかった。測定結果について西浦氏は「思っていたよりも良い結果でよかった」と胸をなでおろした。
それでも競合と比べた場合、阪急交通社のサイト表示速度は3社中2位の結果となった。「(1位の企業について)以前から薄々気づいてはいたが、やはりWeb周りに力をいれていると再認識した」
また、阪急交通社サイトで測定したエラー発生率についても許容範囲に収まっていたものの、「ツアーの申込を進めていくほどエラーの発生率が増えており、そこは改善の必要がある」と、課題も明らかになった。
また旅行予約サイトならではの興味深いデータもあった。測定中、システム的なエラーが無いにも関わらず、サイトにつながりにくくなる時間帯がたびたび確認されていた。西浦氏によると同業他社がサイトにアクセスして、ツアー内容や料金について情報収集をしている可能性があるとのことだった。
旅行業界において、競合他社のツアー内容や料金を調査し、競合他社より更に魅力的なプランをユーザーに提供していくことは、よくある話だという。
この”他社と比べて”という視点は、Webサイトのパフォーマンスについても非常に重要である。他社より軽快でエラーの無い予約システムを提供し、ユーザーにストレスなく利用してもらうことが、ユーザー満足度の向上に直結し、申込数の増加や途中離脱の抑制にもつながる。
ここで最も大事なことは、データを比較するということだ。それはツアー料金でも、サイトの表示速度であっても変わらない。
こうした比較と改善の積み重ねが、競合他社との大きな差別化要因となる。
西浦氏はCloudTriageの利点を2つ挙げている。
一つ目は自分たちのポジションの把握だ。「他社のサイトと比較することで、自社の立ち位置を明確に把握でき、次の改善目標とKPIを設定できたことが大きい」
二つ目は課題意識の共有だ。「これまで表示速度について意識していなかった人も含めて、チーム全体で体感品質向上の必要性を共有できた」「一秒の表示速度の違いがサイト訪問者に与える影響について、調査するきっかけになった」
CloudTriageサイト表示速度測定を終えて、西浦氏はこう締めくくった。
「自社の立ち位置を把握することが、具体的な速度改善の意識に繋がった」「以前から速度を意識していたメンバーもいたと思うが、今回の測定でそれが実務担当者や管理職の人間にまで共有できた」
また、今後についても語っていただいた。「Googleを見てもAMP(Accelerated Mobile Pages)でモバイル向けWebページの表示を高速化するサービスを提供しており、Web全体で表示速度の重要性が高まっていることを感じている」
「まずはモバイル向けの最適化や、表示速度高速化サービスの利用を考えている」「すぐに導入することは難しいが、やっていこうという意識はある」と、更なる取り組みに意欲を見せた。
お客様視点に立ったサービス向上を目指し、阪急交通社の更なる改善はこれからもつづいていく。
阪急交通社では、メディア販売の主力ブランド「トラピックス」をはじめとしたパッケージツアーや、個人旅行の「e-very」、企業・学校などの団体旅行、店舗でのカウンターセールス、近年急増している訪日外国人旅行など、多様化するニーズにお応えするよう、お客様目線に立った旅行商品を提供。